イチロー、ヤンクスとなる
イチロー電撃移籍。いつものようにマリナーズの試合を見ようとテレビのスイッチを入れるといきなり会見をするイチローのアップが画面に映し出されていた。この何かが起こった感じというのには記憶がある。F-1の録画中継のはずがアイルトン・セナの事故現場のライブ映像だった。テレビを点けるとき、この種の衝撃の可能性はいつも頭の片隅にある。でもその時はあまりなかった。正に不意打ちだ。こういうのは忘れた頃にやってくる。まず思ったのはヤンキースはイチローを本当に必要としているのかということ。全盛期のイチローならともかく最近のイチローは不振続きだった。ネットでいろいろ情報を集めてみるとヤンキースで去年盗塁王に輝いたガードナーというスピードのある外野手が故障のため今季絶望となったのを受けての応急的な人事とのこと。イチローは今季限りの代役で来年の再契約はないだろうとの見方が主流だった。イチローのキャリアが大きな転換点に差しかかったことは確かだ。これからは一年ごとに新しい契約を勝ち取っていかなければならない。
イチローが生涯安打数の新記録を打ち立てようとすればどこかに需要がなくてはならない。所属するチームがなければヒットは打てない。イチローが3割を打ち続けることをできていれば何の問題もなかった。実際には今季も0.260前後の低打率である。いくら守備や走塁がいいとはいえ長打のないイチローにとってこの数字は苦しい。さらには極端に四球が少ないため出塁率が悪い。これはかなりのネックになっている。どこのチームも若返りを図るから同じような成績ならば若手を登用する。そういう意味では2番という打順は魅力的だった。2番は常に犠牲を強いられる打順であるため若手には向かない。と同時にあらゆる戦術に対応できなければならず難しい打順でもある。イチローがこれらの能力に長けていることが証明できれば生き残る道はあるのかもしれない、と思っていた。しかしヤンキースに移籍したとなれば話は別だ。レギュラーに定着して地道にキャリアを全うするというよりは能力を切り売りして日銭を稼ぐ派遣社員のような扱いとなる。いろいろな記事を読んでみても下位打線を打ち出場機会も減少するのではないかというのが大方の予想だ。これからのイチローはこういう飛び道具的な役割を担いつつ一年一年を過ごしていくのだろうか。夕刊紙などを読んでみてもかなり辛辣な記事が目立つ。マリナーズでの立場は相当悪くなっていたらしい。スポーツ選手もそのファンも必ず誰にでも訪れるこの破局に耐えなければならない。
とにかくその後の情報が気になるので普段は買わないスポーツ紙を買い漁っている。早くもニューヨークのメディアはイチローを酷評しているという。見出しを見て思わず買う。これがけっこう笑える。つまり「イチローは確かにビックネームだがマドンナと一緒で既に過去の人である」というのである。マドンナになぞらえられるなんてイチローって偉大なんだな。いやイチローが偉大なのは知っていたけれどアメリカでもそのような評価が定着していたということに改めて誇らしく思った。面白いのは辛口で知られるニューヨークのメディアが現在のイチローはポンコツであると断定しつつもどこかで、気分を変えたイチローが全盛期に近い働きをするのではないかと期待していることである。それはヤンキースの豪腕GMにしても同様でイチローの身体能力と守備力に衰えのないとの報告を受けて「うまくすれば、スーパースターを獲得したことになるかもしれない」などと発言しているらしい。もちろん期待の大きい分それが達成できなかった時の反動も大きい。イチローはそのGMとNYのメディアに殺されてしまうらしい。最初は防弾チョッキに包まれた鱒の死体が送られてくるとか朝目が覚めるとベッドの足下の方に切り取られた馬の首が入っているとかの脅かしで済むらしいがそのうちイチロー自身にも被害が及ぶようになりイタリア辺りへ逃れなくてはならなくなる。組織はイタリアでも現地妻と本妻との三角関係をダイナマイトで解決してくれるなどのおせっかいぶりで放っておいてはくれず結局はアメリカへ帰ってきたところを高速道路の料金所に待ち伏せされて撃ち殺されてしまうらしい。
さて僕はこの3日間夢のような時間を過ごさせてもらった。テレビを点けたらイチローがヤンクスになっていていきなりのマリナーズ戦のサヨナラ興行。相変わらず数字は上がらないものの鋭い当りを連発、ハッスルプレーの連続でその上ジーターとの1、2番コンビも見られた。この後イチローのヤンキースでのどんな地獄を見せられようとも今まで通り静かに見守っていきたいと思う。できればワールド・シリーズに出場させてあげたいなあ。
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