ゴールデンスランバー

画像ワーナーマイカルシネマ茅ヶ崎、3月1日、15:55の回。

監督:中村義洋、原作:伊坂幸太郎
出演:堺雅人、竹内結子、吉岡秀隆、劇団ひとり、貫地谷しほり、ほか。


ウ~何だか無性に腹が立つ。
コレやっぱりお話がいけないんじゃないかなあ。冒頭、吉岡くんが食中りしたみたいな陰々滅々とした顔つきで人生について訳知りな発言を繰り返すのを見ていやな予感がしたんだが・・・とにかく冒頭の部分で乗れるか乗れないかでその先の全ては決まってしまう。個人的にはもう少し時間をかけて丁寧に導入して欲しかった。物語りの現実味を帯びてくる前にどんどん先に進んでいってしまう感じ。最初にしっかりしたリアリティを定着させられれば後はどんなに荒唐無稽でも納得がいくのに。吉岡くんが本当に死んだという明確なショットがあれば良かったんじゃないかなあ。何だか後から生き返ってきそうで吹っ切れない。火だるまになって燃え尽きるとか爆発して木っ端みじんになるかの描写があればハッキリしたのにねえ。要するにコレは大学時代の仲良し4人組の後日談のようなお話だからその4人の幸せだった時間帯を観客がある程度共有できなければ見ていて白けてしまうのだ。だって部外者が他人の思い出話を延々聞かされても退屈するだけでしょ?なんだよ、仲間内の昔話をこんな居酒屋ででっかい声張り上げて周りが迷惑するだろ、みたいな。もうちょっと静かにやってくれなくちゃ。または、ケータイで会話しながら爆笑しているヒトに隣り合わせて何が面白いんだか分からなく(当然)てイライラする感じ。

例えば、主人公が国家権力に完全に屈してしまうラストの収め方はホロ苦くて悪くないとは思うけど、だったらそれに対する評価は「たいへんよくできました」じゃおかしくね、とか。主人公はそれでもナントカ生き延びて、どんなにみっともなくても生きなくちゃダメだというならそれもいいけど、じゃあその事件に巻き込まれて死んでいったヒトはどうなるの?特に一番最後に死んだヒトの取り扱いってあまりにも安易で命というものが軽んじられてないだろうか、とか。自分(主人公)たちだけがよければ周りの人(脇役)はどうなってもいいのかねえ。だからこそその4人組の関係が余計に閉鎖的に見えてますます他人事に思えてくるのかも。観客を仲間外れにしてどうするの。ただ、村上春樹の小説を読んだ時にも同種の疎外感みたいなものを感じはしたのだが、その時はそこに何やら鮮烈な青春があるように思えて自分にはそんなものはなかったしコレからもないのだろうと思ったら焦がれるような羨望と諦めの感情が湧いてきてどうしようもなく(自虐的に?)物語りの世界に惹き付けられてしまった。ところが本作の4人組にはそういう憧れを抱けない。それほど深い絆で結ばれているようにも思えないし何か一つ核になるエピソードがあれなあ。強いて羨ましいといえば竹内さんが美しいことくらいだが全体を通してもう一つインパクトに欠けるというか薄いんだよなあ。ただの「よくできました」には満足できなくてエリート・サラリーマンと結婚した竹内さんの(確かにオンナのお子さんは可愛いけど)幸福はいったいどこにあるのだろう。モヤモヤと割り切れない感じはリアルでいいのかもしれないが登場人物たちがその現状を無条件に是認しているらしいのが気持ち悪い。

とはいえさすが中村監督、映画としてはナカナカよくできていて飽きさせないしキャラの立った脇役も楽しい。特に濱田岳の演じるキルオが出色で他にも永島敏行のショットガン刑事なども大いに笑わせる。 泣かせのシステムなんかも確立できているからこっちが寛容な気持ちでいるときや逆にかなり弱っているときなどに見れば随所でウルウル来るのは必至。表面張力で一杯になった感情をパチンと弾けさせるスイッチとしてはいいのかも。思い切りダメな自分になりたい時に部屋でひとりでDVDなどを見るには重宝かもしれない。今日は居合わせた観客にも恵まれなかった。隣には一言多いオバチャンがいて場面の切り替わる時になると誰にとはなしにそのシーンを説明するような発言をする。ちょっとひねった表現などを(というかそんなにひねってないんだが)自分が理解できたことが自慢なのである。とにかくそんな人の前でむざむざと涙なんか流せないのである。それにしても中村監督にはもう少し違ったものを撮って欲しい。一旦人気作家になってしまうと大きな失敗をするまではその路線を追従していくしかないのかなあ。難しいなあ。さて映画の終了時刻が18:30。申し込んだディランのチケットの再配達時刻を19:00~21:00と指定してしまっていたので自転車をかっ飛ばして大急ぎで帰宅。はあああ~、茅ヶ崎から30分で帰るのはしんどいわー。太腿は引きつるし息はぜいぜい、年は取りたくないものだ。ふとそこで、この映画の4人組のノスタルジックな青春を羨ましがるには自分は老い過ぎてしまったのではという疑惑が持ち上がり・・・


ますますむかっ腹が立ったのでした。






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